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  • 2018.03.27 Tuesday
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ブロークン・ブリテンのこどもたち

 Yahooニュースなどの記事でかねてから面白いと思っていた、ブレイディみかこさんの著書を読んだ。

 

 この本は、英国、そして世界で広がる格差、貧困の問題について、「底辺託児所」に通う子どもたち、その親、そこで働く人々などを通して描いている。堅く暗い話題だけれど、トレインスポッティング的おかしみもあって、すらすらと読める。みかこさんが「パンクな保育士」であるからなのだろう。

 

 みかこさんは96年から英国暮らし。生活保護で暮らす「アンダークラス」(既存の階級のさらに下)の子どもたちを預かる無料託児所で働くうちに、政治への関心を持つようになった。

 

 最初は、アンダークラスの人々がなぜ画一的に堕ちていくのか理解できなかったのが、だんだん見えてきたという。人間は「希望」を与えられずに生活保護で「飼われる」と、アルコール・ドラッグ・暴力・弱者(移民など)への八つ当たりなどへ流れてしまうらしい。サッチャーもブレアも、ドラッグディーラーのように無職者に生活保護を与え、麻痺させて黙らせた。そうした社会が作り出した階級がアンダークラスなのだ。

 

 英国では2010年に政権を握った保守党が緊縮財政政策をとり、福祉・教育・医療への財政支出を大きく削減し、2011年にその影響が庶民の生活に出始めた。みかこさんは2008年に「底辺託児所」でボランティアとして働き始め、2010年頃一旦そこを離れてミドルクラスの子どもたちが通う保育園に有給で勤めたのち、また2015年に戻ってきた。空白の4年間のあいだに、託児所とその本体である無職者・低所得者支援センターは激変していた。かつては貧しくカオスでブロークン・ブリテン(アンダークラスのモラル崩壊が英国の社会問題を引き起こしているとされた)を体現しながらも、白人下層階級やインテリ・ヒッピー、移民らが「下側の者たち」としてなんとなく共生していた。それがブレグジットなどを経て、いまは分裂してしまっているのだという。

 

 英国に限らず、米国でもトランプ大統領が誕生したり、世界中で「エスタブリッシュと民衆の乖離」が指摘されている。

 

 みかこさんや私が憧れた英国には、階級は厳然として存在していたけれど、ロックスターやサッカー選手になら下層からでも成り上がることができ、貧しさから抜け出す手段といわれていた。ところが近年では、そういった芸術・スポーツ分野までも、高額な学費を払ってそれらを学んだミドルクラス出身者に独占されるようになったという。教育の予算が削られた結果、これまで無償や格安だった学費が高額になり、下層の階級から抜け出すことが困難になってしまったためだ。

 

 英国ほどではないにしても、日本でも格差は広がっているし、これまでだって日本は英国ほど手厚く教育を支援してきたわけでもない。子どもが希望を持てずして、どんな未来が国にあるというのか??

 

 

 以下は気になった言葉たち(引用)。

 

英国には底辺を底辺として放置させてはいけないと立ち上がる人が必ずいる。地べたで何かをしようとする優れた人々が出てくるのだ。資本主義社会にあっては、優れた能力や経験を持つ人は、それを活かして相応の報酬を受け取れる方向に進むのが通常ではないか。しかしこの国にはそれに逆行するかのような人々がいて、底辺付近のコミュニティに行くと、「なんでこんな人がこんなところに」という人々が働いている。

 

障害を持つ人間は何かの分野で極端に秀でた人が多いという。
何らかの才能は明らかに持っているが、障害やメンタルヘルス上の問題などによってそれを社会で換金することのできないおばさんたちが、無職者・低所得者支援センターにはけっこういる。
「力のある人を世の中は放っておかない」とはいえ、「力」というものの中には、きっと実際の作業をする能力というのはあまり含まれておらず、自己プロモやネットワーキングを行う手腕といった「作業換金力」が八○パーセントから九○パーセントなのだろう。
英国社会の底辺には無数のスーザン(ボイル)たちが存在している。​


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