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未来の台所:3Dプリンタで食べ物も瞬時に出力できる?
- 2011.02.07 Monday
- 翻訳記事
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- by ぷみ
翻訳記事第5回めは、3D出力マシンについて。食べものを含むさまざまな3次元の物体の構造を設計図化することにより、「出力」できるというもの。出始めはいろいろと不具合が多そうな予感がするけど、こなれてくれば便利に使えるかも? 個人的には、食べものは出力したくないけど。
そう遠くない将来、店で食品を買うかわりに、自宅のキッチンで「出力」できるようになるかもしれない。この技術は「フード・ファブリケーション」(訳注:fabricationは「製造」の意) と呼ばれ、インクジェットプリンタが1色ずつインクを紙のうえに重ねていくやり方を応用している。
この新興テクノロジーは、食品の未来に非常に大きなインパクトを与えるだろう。実際、いくつかはすでに実現しているのだ。おそらくもっとも知られているのは、ジェフリー・イアン・リプトン博士率いるコーネル大学コンピュータ総合研究室(CCSL)のプロジェクトだろう。このプロジェクトは、近代的なキッチンに不可欠なものとなる、家庭用フード・ファブリケーション機器の開発を最終目標としている。こうしたマシンがあれば、たとえばブルーベリーマフィンを買いに店へ走ることなく、3Dの「設計図」をダウンロードし、マフィンを「出力」する(そしてオーブンで焼く)だけでよくなるのだ。
未来の台所:3Dプリンタで食べ物も瞬時に出力できる?
What's in your future kitchen? Food fabrication technology prints out your meals in seconds
マイク・アダムス(ヘルスレンジャー)
by Mike Adams
2011年1月26日
そう遠くない将来、店で食品を買うかわりに、自宅のキッチンで「出力」できるようになるかもしれない。この技術は「フード・ファブリケーション」(訳注:fabricationは「製造」の意) と呼ばれ、インクジェットプリンタが1色ずつインクを紙のうえに重ねていくやり方を応用している。
この新興テクノロジーは、食品の未来に非常に大きなインパクトを与えるだろう。実際、いくつかはすでに実現しているのだ。おそらくもっとも知られているのは、ジェフリー・イアン・リプトン博士率いるコーネル大学コンピュータ総合研究室(CCSL)のプロジェクトだろう。このプロジェクトは、近代的なキッチンに不可欠なものとなる、家庭用フード・ファブリケーション機器の開発を最終目標としている。こうしたマシンがあれば、たとえばブルーベリーマフィンを買いに店へ走ることなく、3Dの「設計図」をダウンロードし、マフィンを「出力」する(そしてオーブンで焼く)だけでよくなるのだ。
素晴らしい技術だが落とし穴も
説明を聞くと素晴らしいのだが、実際できるものはというと、チョコレートシロップ、クッキー生地、トマトペーストなどの均質化された半液状の原料から作りだせるもののみとなる。無から生み出せるわけではなく、さまざまな原料が入った「カートリッジ」をマシンに装填する必要がある。フード・ファブ・マシンにできるのは、それらの原料を正しい比率・形・層構造で「出力」することだけだ。野菜を切ったり、生の食材を調理して料理にすることはできない。濃厚なトマトペースト、ほうれん草ペースト、アマニ/ナッツバターペーストなどの生の原料カートリッジを装填して、おいしい「ロー・ラザニア」(生ラザニア)を作ることならできるだろう。 しかしこの技術には、家庭のキッチンで調理しながらも、食べものから人間味が奪われるというおそれがある。家庭料理の素晴らしいところは、独自性や目にも楽しい点である。フード・ファブ・マシンが普及すれば、こうした食文化はまさに一代で失われてしまい、人々はゼロから料理する方法を忘れてしまうだろう。
もうひとつの懸念は、食材「ペースト」が、インクジェットプリンタのインク同様、店でばら売りされるであろうということだ。「食の安全」というルールを守るためには、こうした食品原料はすべて殺菌・燻蒸・放射線照射、その他の方法で「死んだ食品」にする必要がある。つまり、生鮮食品というより、加工済ジャンクペーストになってしまうのだ。
もちろん、マシンを改造して、自家製の新鮮な素材で作ったペースト入りカートリッジを装填することもできるかもしれない。だが、そんな面倒なことをする人はあまりいないだろう。大多数の人は、ただ市販のペーストを買ってきて、家庭で工場の味を量産することだろう。
消費者は、こうしたコスト転嫁ギミックに簡単にひっかかる。(ジレットのシェービング消耗品だってそうだ!)ならば未来のフード・ファブ・マシンも、同じ仕組みを踏襲するであろうと予想される。長期的に考えて利益を最大にしたいと考える企業は、最初にマシンを無償提供して、必要となる食品原料を法外な値段で売りつけるだろう。長期的な利益を確保するため、純正のトナーを買わせるというHPと同じトリックを使ってくるはずだ。物理的な制約を設け、フード・ファブ・マシンで競合他社のトナーを使えなくする。さらにはカートリッジにマイクロチップを搭載して、非純正品が動作しないようにするのだ。(訳注:近年、カートリッジにICチップを搭載して、非純正品を動作させない対策を取るプリンタメーカーが多い。)
フード・ファブ機器周辺は巨大産業となることが予想される。誰かが廉価なサードパーティー製「互換」トナーを提供して、ひと山当てるのを期待するとしよう。ハッカー・コミュニティはオープンソース・コードを提供して、フード・ファブ・マシンをメーカーが意図しない用途に使えるようにするだろう。たとえばFDAが長年認可を拒み続けている、薬効のあるハーブを使った「ナチュラル・キュア・クッキー」など。
ゆくゆくは、未認可の機器で作られた「安全でないマフィン」から「国民を守る」ため、政府がフード・ファブ機器の法規制を始めるかもしれない。現在生乳の販売が禁じられているように、自家製のフード・ファブ・マシン用ペーストを作ることが違法になる日が来るかもしれない。結局のところ、FDAは人々に自分自身の食べものを管理させたくないのだ。フード・ファブ・マシンは行き過ぎた自由の象徴であるから、厳しく規制されなければならない。
これを使えば、スペース・インベーダーのイヤリング、小さなプラスティック製ピンセット、笛や歯車に至るまで、あらゆるものを出力できる。Thingiverse.comというオープンソースのサイトから3Dの設計図をダウンロードすることで、上記が可能になる。今のところ、Thingiverseのライブラリには大したものはないが、この技術はまだまだ実現したばかりなのだ。(自分だけのプラスティック製オリジナル菱面体が欲しくない?)
しかしながら、回路基板や携帯電話をまるごとダウンロードして出力できる日も遠くないだろう。宇宙を長旅中の宇宙飛行士なら、政府が最低価格入札者に発注して作ったNASAの宇宙船が壊れたとき、スペアパーツを出力できる。
ところで、ギーク(オタク)にとって、こうしたファブリケーション機器の最終目標は、それ自身を複製できる機器を作ることだ。もしThing-O-MaticがThing-O-Maticを出力し、組織することができるとしたら、遁走複製(訳注:細胞内のDNA分子が制御を失って複製すること)によって自己複製する機械たちがいつの日か人類に宣戦布告するという、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の人気SF映画シリーズのような事態になるかもしれない。
ソース
http://www.bbc.co.uk/news/technology-12069495
http://ccsl.mae.cornell.edu/3d_printing
もうひとつの懸念は、食材「ペースト」が、インクジェットプリンタのインク同様、店でばら売りされるであろうということだ。「食の安全」というルールを守るためには、こうした食品原料はすべて殺菌・燻蒸・放射線照射、その他の方法で「死んだ食品」にする必要がある。つまり、生鮮食品というより、加工済ジャンクペーストになってしまうのだ。
もちろん、マシンを改造して、自家製の新鮮な素材で作ったペースト入りカートリッジを装填することもできるかもしれない。だが、そんな面倒なことをする人はあまりいないだろう。大多数の人は、ただ市販のペーストを買ってきて、家庭で工場の味を量産することだろう。
インク1ガロンが7500ドル?
フード・ファブリケーション機器のビジネスモデルを考えてみよう。ヒューレット・パッカード社がコンピュータ業界で立証したこと。それは、消費者はプリンタの長い目で見たランニングコストにはほとんど注目せず、ハードウエアを買う際の初期投資の安さに目をひかれがちだということだ。たとえば、典型的な消費者は、49ドルでインクジェットプリンタを買えるなんてお買い得、と考え、そのプリンタがインクを1ガロン(訳注:約4リットル)消費するごとに7500ドルかかる、ということは頭にない。消費者は、こうしたコスト転嫁ギミックに簡単にひっかかる。(ジレットのシェービング消耗品だってそうだ!)ならば未来のフード・ファブ・マシンも、同じ仕組みを踏襲するであろうと予想される。長期的に考えて利益を最大にしたいと考える企業は、最初にマシンを無償提供して、必要となる食品原料を法外な値段で売りつけるだろう。長期的な利益を確保するため、純正のトナーを買わせるというHPと同じトリックを使ってくるはずだ。物理的な制約を設け、フード・ファブ・マシンで競合他社のトナーを使えなくする。さらにはカートリッジにマイクロチップを搭載して、非純正品が動作しないようにするのだ。(訳注:近年、カートリッジにICチップを搭載して、非純正品を動作させない対策を取るプリンタメーカーが多い。)
フード・ファブ機器周辺は巨大産業となることが予想される。誰かが廉価なサードパーティー製「互換」トナーを提供して、ひと山当てるのを期待するとしよう。ハッカー・コミュニティはオープンソース・コードを提供して、フード・ファブ・マシンをメーカーが意図しない用途に使えるようにするだろう。たとえばFDAが長年認可を拒み続けている、薬効のあるハーブを使った「ナチュラル・キュア・クッキー」など。
ゆくゆくは、未認可の機器で作られた「安全でないマフィン」から「国民を守る」ため、政府がフード・ファブ機器の法規制を始めるかもしれない。現在生乳の販売が禁じられているように、自家製のフード・ファブ・マシン用ペーストを作ることが違法になる日が来るかもしれない。結局のところ、FDAは人々に自分自身の食べものを管理させたくないのだ。フード・ファブ・マシンは行き過ぎた自由の象徴であるから、厳しく規制されなければならない。
ファブリケーション・マシンの数々
ところで、将来的に家庭で出力できるものは食べものだけではない。樹脂などを材料にして立体物を製造する卓上タイプのファブリケーション・マシンが続々と開発されている。Makerbot Industries社が最近発表したThing-O-Maticという3Dプリンタは、素早く固まる樹脂を使って小さなものを出力できる。これを使えば、スペース・インベーダーのイヤリング、小さなプラスティック製ピンセット、笛や歯車に至るまで、あらゆるものを出力できる。Thingiverse.comというオープンソースのサイトから3Dの設計図をダウンロードすることで、上記が可能になる。今のところ、Thingiverseのライブラリには大したものはないが、この技術はまだまだ実現したばかりなのだ。(自分だけのプラスティック製オリジナル菱面体が欲しくない?)
しかしながら、回路基板や携帯電話をまるごとダウンロードして出力できる日も遠くないだろう。宇宙を長旅中の宇宙飛行士なら、政府が最低価格入札者に発注して作ったNASAの宇宙船が壊れたとき、スペアパーツを出力できる。
ところで、ギーク(オタク)にとって、こうしたファブリケーション機器の最終目標は、それ自身を複製できる機器を作ることだ。もしThing-O-MaticがThing-O-Maticを出力し、組織することができるとしたら、遁走複製(訳注:細胞内のDNA分子が制御を失って複製すること)によって自己複製する機械たちがいつの日か人類に宣戦布告するという、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の人気SF映画シリーズのような事態になるかもしれない。
モノそのものではなく、バーチャル設計図を買うということ
こうした出力システムにより、消費者中心の社会に非常に大きな変化が起こることは間違いない。今日私たちが買うモノは、中国で生産され、化石燃料を消費して店まで輸送されてくる。私たちはモノを買い、持ち帰り、いつか必要になるときまで家のどこかに転がしておく。(肝心なときに見つからないハエたたき)
ファブリケーション機器が普及すれば、モノ自体を買い置きしなくても、その設計図を買えば済む。実際に使うときまで、モノを作りだす必要はない。今日、ハエがぶんぶん飛びまわっているのを見た? 前に買っておいたハエたたきの設計図をThing-O-Maticに読み込ませ、出力しよう。ハエたたきができあがったら、問題解決だ。
家庭用ファブリケーション技術によって、ハエたたきだの、ソープホルダーだの、じょうごだの、携帯電話カバーだのといった雑多なモノをため込む代わりに、ほんの数分で何にでも加工できる樹脂だけ買い置きしておけばいい。これが重要なことだ。いくらか初期費用はかかるが、一度設計図をダウンロードすれば、その先同じものを何個でも出力できる。
それでもなぜ店が必要なのか
デスクトップ・ファブリケーション・マシンでは金属製品を出力できない(少なくとも見通しが立てられる段階ではない)。理由ははっきりしている。細いチューブから絞り出せるような、プラスティック樹脂や食品などの原料しか扱えないからだ。キッチンシンク下のいやな水漏れを直すのにしっかりしたレンチが必要になれば、やはり小売店で買うしかない。
複雑な回路やCPUも、家庭での出力は近い将来には無理だろう。今後10年ほどで、小さなソーラーパネルくらいなら出力できるようになるかもしれないが(研究室では大きなサイズの出力に成功している)。
偽の100ドル札を出力して友だち皆に配る、ということもできない。それは連邦準備銀行の仕事だ。
それでも、フード・ファブリケーション・マシンとデスクトップ・ファブリケーション技術は、現代社会における購買や消費のあり方に革命的な変化をもたらすだろう。また、小売店で包装された状態の商品を買うことがなくなれば、埋立地に直行するプラスティック包装(プチプチ)も大幅に減るだろう。このことから、家庭用ファブリケーション機器は「グリーン」テクノロジーだと評価できるかもしれない。
急速に進歩するこのテクノロジーを注視しよう。大企業は今後数年のうちに消費者向け機器の製造に参入すると想定しておいたほうがよい。
ソース
http://www.bbc.co.uk/news/technology-12069495
http://ccsl.mae.cornell.edu/3d_printing
(翻訳:渡辺亜矢 Japanese translation by Aya Watanabe)
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